154 名前: 無名武将@お腹せっぷく [sage] 投稿日: 2007/06/22(金) 22:37:21

名手・夏侯淵

建安15年冬、曹操は銅雀台を築きあげ、その落成の式に文武百官を集めて盛大に祝い始めた。
その余興として、腕に覚えのある武将たちは日頃の鍛錬の成果を見せる機会が訪れた。
曹操が、遠くから弓を射て、見事的に当てることが出来たのなら褒美を取らすと言ったのだ。
そこでまず、曹休が見事的に命中させた。
それに続いて、文聘、曹洪、 張郃も的に命中させ、場を沸かせた。
そしてついに、弓を使わせたら右に出るものがそうはいない名将・夏侯淵の出番が来た。
的から離れ、弓を持った夏侯淵はふと思った。
(このまま普通に射て、命中させても他の者と同列…)
的に命中する4本の矢。
それを凝視しているうちに、夏侯淵の脳裏に天啓と思わんばかりの名案が閃く。
(…これだ!)
心を鎮め、夏侯淵は、ただ目標に向かって一直線に矢を放つ。
その夏侯淵の動作に、長年見てきた曹操も思わず感嘆の息を漏らす。
戦場とは違い、ゆったりとした動作で射るその姿はただただ美しかった。
そして夏侯淵の放った矢は、的に向かって一直線…とはならず、大きく外れてしまった。
「めずらしいこともあるもんだ…淵が外すとは」
的から大きく外れた方向に飛んでいく矢じりを見て、曹操は呟いた。
「淵、疲れておるのか?お前がこの程度の距離を外すとは…」
「殿、何をいいますか。よく矢が向かっていった方向を御覧下され」
「むぅ……?」
言われた通り、的から大きく外れ、飛んでいった矢の方向を見る。
「……なんと!!そういうことであったか!!」
やっと曹操も気づいた。夏侯淵がどれほどの偉業を成し遂げたのかを。
夏侯淵が放ったその矢は、的から大きく外れはしたものの、あるモノをきちんと射抜いていたのだ。

155 名前: 無名武将@お腹せっぷく [sage] 投稿日: 2007/06/22(金) 22:38:08

ほんの少し前。
的を射抜くことに成功した曹洪は、気分上々、詩を口ずさみながら小躍りしていた。
自分のやることが終わってしまった曹洪は、もはや意識は蚊帳の外。
曹操から貰えるであろう褒美のことばかり考えていた。
「んん〜〜っ!気持ちのいい日だ」
暖かな陽気を浴びて、伸びをしながら声を上げる曹洪。
「危ない…!!」
ふと、耳に入ったその言葉。
しかし 呆けていた曹洪にはそれが何を意味しているのかわからなかった。
「なんだ、なにが……アッー!!」
完全に脱力していたそのときに、尻に侵入してきた異物。
「こ……これは……」
理解できない。
なぜいきなり自分の尻に矢が突き刺さっているのかを。
よく見ると、まだ二、三本こっちに向かって飛んできているではないか。
「えぇえぇえぇ!!」
その場から離れようとした曹洪だが、弓の名手、夏侯淵から逃げられるはずもない。
「ひ、ひいぃ…!ぎゃあああああアッー!!」
曹洪は、結局5本の矢を尻に受けて失神した。

156 名前: 無名武将@お腹せっぷく [sage] 投稿日: 2007/06/22(金) 22:39:23

この銅雀台での出来事で、夏侯淵はさらに曹操の信望を得ることが出来た。



久しぶりに投稿…。
二、三日前に書いて投稿するの忘れてた。
そして書いて読み直したら全然ホモネタじゃないことに気づいた。
まあいいか…。