624 名前: 無名武将@お腹せっぷく [sage] 投稿日: 2007/04/12(木) 14:07:33

三国尻演戯

 劉備、関羽、張飛の三人は桃園で義兄弟の契りを果たした。
劉備「さあ!儀式も終わったし、、今日はたらふく食って、飲もう。
   母上の用意なされた馳走があるし、酒は雲長が沢山持ってきてくれた」
 三人、それぞれ席に着き、宴は始まった。劉備は大いに飲み食いし、関羽は
飲んだ。しかし、ただ一人張飛は俯いて、食事に手をつけようとしない。
関羽「どうしたのだ益徳?何も食わないなど、お前にしては珍しい」
劉備「そうじゃぞ。いつもなら誰よりも先に飲み食いしておるだろ。調子でも悪いのか?」
 箸を休めて、心配そうに張飛の顔を覗く二人。そんな二人に、張飛はボソボソと食わない
理由を話し始めた。
張飛「長兄の母上は、この食事…どうやって用意したんじゃ…」
 なんと張飛は、生活の蓄えをありったけ使って宴の準備をした劉備の母を心配していたの
だった。
張飛「そんなボロボロになった手で毎日田を耕し、ようやく収穫したモンをよ…赤の他人の
   俺なんかが食っちまっていいのか?これからは長兄も家にはいられなくなって、生活
   はもっと苦しくなる。これらは皆、その時のために蓄えておくべきものじゃないのか?」
 言い終わった頃、張飛は泣いていた。これからの劉備母の辛く寂しい生活を思っての涙だった。
 宴の場はシーンと静まった。特に劉備は俯いてしまった。母のことを一番気に病んでいたのは
彼なのだ。張飛の思わぬ優しさに、不意に泣きそうになってしまっていた。

625 名前: 無名武将@お腹せっぷく [sage] 投稿日: 2007/04/12(木) 14:21:37

母「何を泣いているのです!」
 突然響いた声に、三人はハッと顔を向けた。見るとそこには、母が立ってこちらに
微笑みかけていた。
母「大志を持って旅立とうとしている男子が、こんな老婆のことを気に掛けていてはいけません
  貴方たちは、これからけして俯かず、己の信じた道を行ってくだされば、母は嬉しいのです」
 そんな優しく励ます言葉に、三人、特に張飛は大粒の涙を流した。
母「ありがとうございます張飛殿。この老いぼれを労わって下さって…でもいいのですよ。
  貴方たちは我が子の義弟。ならば私にとっても息子たちです。私のことなど気にせずどうか…」
 そういうと、母は料理の入った杯を張飛に進めた。
張飛「母上殿…いやさ、母上…ならば遠慮なくいただきますぞ」
 そういうと張飛は母と関羽に進められるまま大いに食うのであった。

626 名前: 無名武将@お腹せっぷく [sage] 投稿日: 2007/04/12(木) 14:35:26

その夜

母「二人はもう寝た?阿備ちゅわ〜〜〜ん」
劉備「もちろんグッスリだよマ〜〜〜」
 満月の夜。獣のように眼をギラギラさせた劉備親子は、関羽と張飛の眠るはず
の納屋へ入っていった。
 そこにはこんもりと膨れ上がった藁布団があった。かすかに鼾が聞こえてくる。
劉備「くくくぅ〜頭まで被っちゃって…竿までそんなだったら承知しないぞ☆」
母「うふふ。私の作ったものを食べたからには、もう私のコも同然。母親としては
  息子の竿の成長まで心配してあげないとね」
 涎をたらしながら藁を乱暴に剥ぎ取った親子の見たものは、二人の義弟ではなく、
ここにはいない筈のカンヨウであった。
母「…逃げられたようだね」
劉備「…そうみたいだねマー」

……
………
…………まあ、こいつでもいっか…
カンヨウ「ぎゃああああああ尻が裂けるうううう」

627 名前: 無名武将@お腹せっぷく [sage] 投稿日: 2007/04/12(木) 14:56:01

(遥か彼方から)「ぎゃあああああ尻が裂けるぅぅぅぅ」

関羽「どうやら気づいたようだな…」
 満月の明るく照らす夜道を、関羽、張飛は小走りに駆け抜けていた。
張飛「まったく…義理とはいえ兄弟の尻を狙うとは、兄貴にも困ったもんだぜ」
 満腹になって、納屋で寝ていた張飛を起こしたのは関羽だった。目覚めたときには
既に身代わり(カンヨウ)も用意されており、二人とも慌てて逃げてきたのだ。
張飛「しかし、雲長兄貴から『逃げるぞ』といわれた時は、どうしたのかと思ったぜ」
関羽「ああ。長兄の家に入ったとき、入り口に奇妙な形の棍棒があったのが目に入ってな。
   あの人の母のことだ。ただで済むわけがない。最悪『食った分体で払え』と言われかねないと
   思っていたんだ」
 関羽の洞察力のおかげで、危うく難を逃れた張飛は、兄に深く感謝し、これからも命を掛けて信用
しようと誓うのだった。
 …しかし、感激していた張飛は忘れていた。劉備邸で出される母の手料理が危ないと思っていた関羽
は、自分の分の料理を全て張飛に進めていたこと。ヒトには勧めておきながら、自分は持参した酒しか
飲んでいなかったことを…。