25 名前: 無名武将@お腹せっぷく [] 投稿日: 2006/12/01(金) 18:41:09

壇渓を飛ぶ

劉表の元に食客として養われていた劉備。
その劉備を疎み、殺そうと姦計をめぐらす蔡冒…
蔡冒は襄陽の会で劉備を呼び出し、その場で兵によりその尻と掘り散らそうと画策していたのであった。
だが親劉備派である伊籍により劉備は自己の危機を知り、愛馬である的櫨に跨り必死に逃げるのであった…

さて、唯一兵の回ってない西門から逃げた劉備であったが、その道は轟々と流れる激流により断たれていた。
劉備「これはいかん!ここをわたるのは無理か…」
そう言って踵を返そうとしたが、来た道からは「ウホッ!皇族の尻を掘ろうぜ!」と言う兵の声がもう聞こえてきていた。
劉備「むむむ…引き返すことも無理か…」
そう言うとしばし瞑目する劉備。
クワッ!と目を開くと大声でこう言った。
劉備「的櫨、的櫨!そなたは真の凶馬か否か!凶馬で無いというなら、ここを渡り我を助けよ!!」
的櫨「ヒヒ〜ン(いや、凶馬って訳じゃないけど、この流れをわたるのは無理だろ、常識的に考えて…
   馬でも分かっちゃうよ?)」
劉備「行くぞ的櫨!」
的櫨「ヒヒーン!(いや、だから無理だって!聞いてねえのかよ!あ、馬の言葉分からんか…とにかく無理!)」
いくら劉備が手綱を操作しようとも、的櫨は全く動こうとしなかった。
劉備「的櫨!そなたはわしを殺そうと言うのか!?」
的櫨「ブルルッ!(お前は俺を殺そうと言うの?あんなとこ飛び込んだら俺死んじゃうよ!
   ってか兵に殺されるのはお前だけだから、俺はここに居れば安泰だし。)」
劉備「ええい、この馬鹿馬め!拉致があかん!喝を入れてくれる!!」

もう落ちまで予想が付いてるだろうけど続く

26 名前: 無名武将@お腹せっぷく [sage] 投稿日: 2006/12/01(金) 18:42:12

続き

そう怒鳴ると劉備は素早く腰を後ろにずらし、的櫨の尻にしがみつく体勢になった。
的櫨「ブルル?(ん?なーにやってんの?そんな変な乗り方して何にな…)」
劉備「飛べ、的櫨!」
そう言うが早いか、劉備は竿を的櫨の尻に突き立てた!
的櫨「ブヒヒヒヒーーーン!?(ギャァァァァァァァッ!?)」
劉備「フンッ!フンフンッ!」
的櫨「ヒヒーーーン!(痛いッ、痛いッー!う、動かないでぇぇぇぇ!!)」
劉備「さあ気合も入ったろ!行くのだ、的櫨!」
的櫨「ヒーーーン!(わ、分かった、行くから、行くから動かないでぇぇぇぇ!)」
こうして尻に人を貼り付けた馬は、激流の中に飛び込んだのであった。

劉備「ゴボボボッ!な、流されておるではないか、的櫨よ頑張れ、ほれ、喝じゃ!
   フンフンフンフンッ!」
的櫨「ヒンヒン!(渡るから、渡るからぬいてぇぇぇぇッ!)」
劉備「何が抜いてじゃ!そうは言っても竿は正直ではないか!」
的櫨「ヒンッ!?(ええええ!?俺の言葉分かってたの!?分かってたのか!?ってか竿をさすらないでぇッ!)」

さてこんな劉備の喝がきいたのか、類稀な力を的櫨が持っていたためか分からないが、二人は対岸に上がっていた。
劉備「ああ、我生きたり!」
そう言って劉備は天を仰いでいた。
的櫨「ブヒヒヒ!(あんた生きてるから、さっさと竿を抜いてくれぇぇぇぇッ!)」
こうして尻に人を貼り付けた奇妙な馬はいずこかへ走っていったと言う…

                                                 〜完〜