934 名前: 職人見習い ◆fVKI4ilHCQ [sage] 投稿日: 2006/11/23(木) 17:21:27

姜維の最期 第伍話 この名に懸けて 1

姜維と鐘会の企てた謀反に対し、魏臣の不満は日に日に渦巻いていた。
そして蜀姦帝国滅亡の翌年、264年。魏臣の不満はついに武装決起という最悪の形で噴出した。
決起軍を指揮したのは鐘会の監軍を務めた衛瓘、そして胡烈、胡淵父子であった。
衛、胡の魏郡は黒い濁流となって性都の市街になだれ込んだ。

魏兵「おお、貴様は姜維軍の兵じゃな?掘ってくれる!!」
魏兵「わしはこっちの尻じゃ!!」
蜀兵「あわわ・・なにとぞ手荒な真似は・・!」
魏兵「うるさい!貴様の主君が悪いのじゃ、ふんっ!!」
蜀兵「ぎゃあああっ!やっ、やめてくだされーっ!!」
蜀兵「尻が・・っ!俺の尻が裂けるーっ!!」
魏兵「わはは!切ないのう!!」
魏兵「さあて、雑兵の尻はあらかた掘り尽くした。いよいよ本命じゃ。宮城を襲い、謀反人の尻をいただこうぞ!!」
一同「うおおおおっ!!!」

??「そこまでぞ、野獣共!」
魏兵「………!?」
??「これより先はこの某の目が黒い限り、一歩たりとて進ませぬ!!」
----「吾こそ漢の司徒張浩が玄孫、広陵太守張綱が曾孫、張伯恭!!…前漢高祖が元勲、張子房が末裔なり!!!」
魏兵「げぇっ 張翼!!」

その出自の上に、張翼の勇名は既に中華全土に広まっている。
魏兵はその名を聞いて一瞬の躊躇を見せた。

935 名前: 職人見習い ◆fVKI4ilHCQ [sage] 投稿日: 2006/11/23(木) 17:37:06

姜維の最期 第伍話 この名に懸けて 2

一介の武辺者であれば、即座に単騎で魏兵の中に突入しただろう。
しかし張翼とは最期まで将軍であった。四散した蜀兵をまとめて最も被害の大きい一角に駆けつけたのである。

張翼「来たぞ!方円の陣を組めい!!」

進撃した魏軍の前に、勇壮な方円の陣が現れた。
説明しよう。方円の陣とは、四方からの竿ぶすまに対抗するために考案された陣形で、
兵士達が尻を外側に突き出した形で円陣を組むというものである。

張翼「よいか、敵を引きつけ、充分に挿入されるのを待ってから折れ!!」
魏兵「ふんっ!ふんふんっ!!」
蜀兵「よし、挿ったな。食らえ、ふんっ!!」
魏兵「ぎゃあああっ!!」

竿を折られた雑兵がばらばらと地に転がる。
張翼軍の働きはめざましく、魏軍も一度は勢いを削がれ、そのまま後退を余儀なくされるかに見えた。
しかし、魏軍は突撃を止め、股矢戦法に切り替えた。
姜維・鐘会という怨敵を目の前にして性欲の高まった魏軍の股矢の威力は素晴らしく、蜀兵を次々に吹き飛ばした。

蜀兵「敵の勢い盛ん、こちらが押されております!」
張翼「・・やむを得ぬ。ここは退き、宮城前にて決戦に持ち込もう。」
蜀兵「将軍、ここは某どもにお任せくだされ。」
張翼「おお、よく言ってくれた。貴様の忠義は忘れぬぞ。」

姜維と違い、軍事に留まらず政治眼にも長け、兵の信頼も得ていた張翼。
齢70を過ぎ、最期の一花を咲かせようとしていた。

937 名前: 職人見習い ◆fVKI4ilHCQ [sage] 投稿日: 2006/11/23(木) 21:53:13 New!

姜維の最期 第伍話 この名に懸けて 3

張翼は宮城の門前に退却し、最後の抵抗を試みるも、多勢に無勢。もはや堀り取られるも時間の問題であった。
一方、宮城からは姜維が城内の紛争を眺めながら呆然自失としていた。

張翼「大将軍ッ。」
姜維「……………。」

張翼は姜維の姿を見やり、やりきれない思いにかられた。
確かに一連の計画は半生を北伐に懸けた姜維の最後の意地であった。気持ちも分からぬでもない。
しかし、今はなんとか姜維の戦意を引き出さなければならない。

張翼「何をしておるのか、大将軍ッ!!」
----「貴公は全蜀軍の総司令官、諸葛丞相の後継者であろう!!」
----「狄道に進んでは三県を白濁の汁に沈め、洮水に於いては魏将王経を散々に堀り散らした姜伯約であろう!!」
----「天佑に恵まれず、胸中の計ならずとも、貴公には蜀の最後を見届ける責務があろう!!」
----「何をそのようなところで呆けておるのかッ!!」
姜維「……………ッ!!!」
張翼「某はここで逝かせて頂く。先に九泉の下で待っておりますぞ。」

その時、遂に魏兵の大群が宮城前へと押し寄せてきた。
対する張翼はたった一人、その渦中に仁王立ちをしている。

張翼「…この先に進むのであれば、吾が尻を掘り取ってからにするのだな!!」
----「吾と思わんものは前へ出よ!死出の道連れにしてくれん!!」

938 名前: 職人見習い ◆fVKI4ilHCQ [sage] 投稿日: 2006/11/23(木) 21:57:12 New!

姜維の最期 第伍話 この名に懸けて 4

魏兵1「…て、敵は一人じゃ!吾らが総出でかかれば恐るるに足りん!!」
魏兵2「ではまずわしが行くぞ!ふんっ!」

(スカッ)

魏兵2「何!消えた!?」
張翼-「遅いッ。(背後に回る)この雑兵めっ!食らえっ!!」
魏兵2「ぎゃあああっ!しっ尻が裂けるうっ!?」
張翼-「ふんっ!ふんふんっ!!」
魏兵2「痛いっ!痛いーっ!!うっ動かないで・・・っ!!」
張翼-「嘘を言うな!こんなに股の竿を硬くしおって!!」

魏兵53「ならばこれはどうじゃ!」
張翼--「なんだ、フニャ珍ではないか!むんっ」
魏兵53「ぎゃあああっ!さ、竿が折れるうっ!?」

魏兵78「し、仕方ない!三人で組んで突撃じゃあっ!」
張翼--「ふん、三人で来ようと同じこ…(なっ、精が出ぬッ。まさか、このような所で…)」
魏兵79「股矢切れのようだな。これで終いじゃ!」
張翼--「ぬおおおおおおおおおおッ…大将軍ーーーッ、後はお頼み申すーーーッ!!!」

かくして、代々漢に仕えた家に生を受け、自身も生涯を漢朝のために尽くした男、張翼は戦尻した。
姜維は戦友張翼の最期を見届けるとひとしきり涙を流し、自身もそれに続かんと意気を新たにする。
そこにあったのは先ほどまでの独りよがりの謀主の姿ではなく、
かの諸葛亮の後継者として魏を震撼させた蜀姦最後の名将、姜伯約の勇姿であった。